「フィサリスの三肢がない日常 11」

 ※本編の「蒸気装甲戦線」とはまた一味違った
  この作者様独自の構成の作品となります。
   


蒸気美容法

蒸気美容法とは、肌に高濃度のスチームをまとわせることによって、美容効果、老化防止、肌荒れにも効く最新の美容方法である。
高濃度のスチームは近年、老廃物や排泄物、病原菌を除去することが分かった。一瓶500円程で、市販もされている。

発見者であり、美容法の開発者である一人のミスミ氏に名インタビューを試みることに成功した。

「蒸気美容法についてですか、大丈夫ですよ」
「フィサリスさんやマティーさん、別のところからですが、ヴィーさんが結構ボロボロになってくるのを見て、労わってあげたいなって思って」
「ボロボロというのは、肉体的にではなく、お肌的っていうことです!」
「あの人たち、常に高熱のスチームを身にまとって戦ったり、壁に穴をあけてよじ登ったりしているので、肌あれているんですよ」
「まあ、近くで見ないとわからない部分が多いんですけどね。鍛えていますから」

――――

「そして、蒸気をサウナ風呂みたいにして…、流石にこの雑誌の記事受けたのはちょっとね」マティーが呆れたように言う。
あくまで警察なので、秘密が漏れることを恐れての発言だ。それに、どうも、インタビューという形が気にくわないようだ。
「いいじゃないですかー!たまには、こういうの受けてみたかったんですよ!」ミスミが不貞腐れたように言う。
「いいんじゃない?むしろ、ミスミが受けてくれて助かったよ」ヴィーが無表情で機械的にフォローする。
どうでもいいような感じで、あまり気にもしていないようだ。
「まぁまぁ、次から気を付ければいいじゃない」フィサリスがマティーの援護に入る。彼女はエプロン姿で、通常義肢を三肢に身にまとっている。
彼女の手には、鍋に入った蒸気カレーが入っている。香辛料と、各種野菜、そして中に蒸気を入れたカレーだ。
近年の研究で、蒸気に美容効果、そして体内環境の正常化の効果があるとの話で、彼女たちも積極的に取り入れているのだ。
今のマティーの四肢は、両腕がフィサリスが付けているような通常義肢、そして、足は、逆間接のものとなっている。
この義肢は、血着地の時のショックには強いが、あまり、歩行とかには向いていないのだ。
「あのときの義肢には、内部の蒸気筋肉がズタズタで、直すのには時間がかかるのですよ」ミスミが答える。
「この逆間接苦手なんだけど。あいつには、腕も狼みたいな逆間接の義肢を付けられ、蒸気鎧に襲われたんだよ」マティーが言う。
「奴らが言うには、見世物だってさ。むかついたんで、蒸気鎧をバラバラに引き裂いてやったよ」自慢げに言うマティー。
だが、そこで蒸気義肢が駄目になってしまい、気を失ってしまったようだ。
「どうやって倒したんですか?」フィサリスが言う。

―――
蒸気鎧の上に犬のように覆いかぶさるマティー。蒸気鎧は何事かと、面食らっている。
そして、蒸気鎧のハッチの部分を、蒸気義肢の爪の部分を使って、ねじ込んでいく。痛みはあるが、それを無視する。
そして、スキマが空いたら、一気にハッチをこじ開け、中の人間の姿を見る。
「犬のしつけがなっていないようだね」マティーが不貞腐れたように言う。中のパイロットは、動揺して返事もできない。

――
「そしてしこたま、ひっかいてやった後、ひざまつかせてやったわけさ」マティーが言う。
「流石!」フィサリスが顔を輝かせて言った。
その義肢は、グラークが預かっている。どうやら調べてみたいことがあるようだ。




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