「フィサリスの三肢がない日常 12」

 ※本編の「蒸気装甲戦線」とはまた一味違った
  この作者様独自の構成の作品となります。
   


「フィーちゃん、最近腕なまっていない?」マティーが言う。
「ああ、最近さ、出番があんまりなくてね」フィサリスも言う。
この頃事件があまりなくて出番があまりないのだ。
「じゃあ~昔の本でも読んでみますか~?」グラークが昔の本を取り出す。
そこにはある騎士団の話が合った。その名も「黒鉄騎士団」。

―――――
グラーク=バルム=ゴルゴンゾアー三世は新たな剣のアイデアを話していた。
簡単に言えば、黒鉄騎士団式大剣を改良したものだ。
クロロフィールと呼ばれる黒い光沢を放ち、魔物鉄より製造された大剣。 
巨体かつ剛力が常な魔物を相手にする為に大質量だ。

「うるさいです。今のままで大丈夫です」ローズマリーが言う。
彼女は18歳ながら、騎士団での中心を担う戦力だ。
だが、今回の件の話にはあまり興味がないようだ。

「聞くぐれぇ別にいいだろ~」ロイがフォローする。
騎士団の中ではいたって平凡な男との評判のロイ。
だが、その愛用の良さと面倒見の良さが、対人関係の潤滑油となるので。
人脈でいえば騎士団一広い。

「エバンズさんの言うとおりだよ。聞くだけ聞いてみたら」
ルノ=G=ゴルディオが言う。諜報部隊の所属だが、休みのため気が向いてよってみたのだ。
「基本的に」人当たりが良く中世的なふるまいを得意とする。

今回の素材は、「レッドアイ」だ。簡単に言えば、人間を模した人形だ。
大量におり、言葉を発するため、侮れない相手として警戒されている。
だが、魔物と違い、人形のため討伐自体は容易だ。
かつて世界を破壊しつくしたとうわさされるが、それは今を生きる者には関係ない話だ。
このことは伝説の冒険家と噂されるキツネの自著伝に記されている。
彼らは、鉄を元とするため、剣や鎧の素材として重宝されるのだ。


先日破壊したレッドアイは二体、そのうち一体は、首筋に剣を突き立てたら、
可動停止したので、素材が潤沢に手に入ったようなものだ。
グラークにしてみれば、僥倖そのもの。大興奮というわけだ。
だが、その話を聞かされるローズマリーにとっては退屈の一言。
…ということだ。

「で私が思うに、案山子にして獲物を誘って…」ローズマリーが話題を変える。
ローズマリーにしては真剣の一言だが、グラークにとっては、退屈の一言。
グラークがくぅくぅと居眠りしているのを見て、やれやれという雰囲気のロイ。
そして微笑むルノ。

――――――

「日記?」フィサリスが言う。
「え~私の祖先の記録なんです~」グラークが言う。どうやら、祖先がいた団体の記録のようだ。
「当時から変わり者ぞろいなんだね」少し呆れるマティーであった。





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