「フィサリスの三肢がない日常 9」

 ※本編の「蒸気装甲戦線」とはまた一味違った
  この作者様独自の構成の作品となります。
   

※2017/10/03 更新

一人目は、腹のみぞおちに来た拳での打撃を左手のひらで止めた後、上段回し蹴りで頭部の数センチ前で寸止め。
二人目は、相手の蹴りを左手と右足で止めた後、そのまま倒れながら相手の腕挫を十字に固める。
三人目は、上段回し蹴りを頭の動きで軽く避けた後、相手のみぞおちを地獄づきで突く。
四人目は、フィサリスからの打撃を防ぐため投げ技に持っていくとみて、フィサリスもそれに応じたのだが…
相手の手の動きはそうではないらしくまず、フィサリスの胸を道着の上から掴んで揉んだ。
「何…これ?」フィサリスがあっけらかんに言う。
「いえ、フィサリスさん、いつも相手の不意をつけというでしょ。だからふいをつこうと……」四人目の男性、ローウは答える。
「変態野郎、死ぬ覚悟はいい……?」フィサリスが眉間にしわを寄せて、拳に力を籠める。
「あの…すみません。大きかったから触りたかっただけで……」相手の胸衝撃が走った。
そのまま、ローウはフィサリスの左アッパーにより2メートル先に吹っ飛んで、サブトンの塊に突っ込んだ。ローウの表情は苦痛で歪んで鼻から血を流していながらも幸せそうだ。
「じっさまー!この変態さー、後でみっちりしごいといてー!」フィサリスがそう答える。
「やれやれ、最近のは欲深くてたまらんのう」八墨が白髪交じりの髪が薄い頭を書きながら呆れながら答える。
「最近大工仕事が忙しいからって、訓練怠けてんじゃないー?もっとしごいとかないと」フィサリスが呆れながら答える。
「今日は四人しか来ていないのね。暇だわ」
「まだ午後の一時じゃ。これから来るわい」八墨がそう答えると、道場の扉が勢いよく音を立てて開いた。
「フィサリスー!!一試合してくんないー!?」マティーがそう答えながら入ってきた。
「マティー先輩、来てくれたんですね。いいですよー!フラストレーション溜まっていたとこですしー!」
フィサリスが笑顔で答える。そして近くにあった道着をつかむとマティーに投げ渡した。
マティーもこの道場に来ていた時期がある。最近は警察署での仕事で忙しいからあまり来られてはいないものの、腕は鈍ってはいない。
「こちらもフィサリスと同じく日常義肢だけど右腕外そうか?同じ状況でないと勝っても釈然としないし」マティーがそう胴着に着替えながら質問する。
「いえいえ大丈夫ですよ。このままで」フィサリスが答える。
「おっけー了解した」胴着に着替え終わった後のマティーが返答する。女性用の胴着ではあるものの、胸はきつめのようだ。彼女はフィサリスより胸が大きいのだ。
そして二人は型を組んだ後、お互いに1メートル離れて礼をした。

「ルールはマジあてありね。先に床に倒れてしまった方の負けだから」フィサリスがそう答える。
「おっけ~」マティーもそれに応じる。
マティーがそう答え終わった刹那、フィサリスが一瞬にして間を詰める。
そして拳を固めて、打撃をする。それをマティーが腕をXの字にクロスさせてガードする。
そしてマティーの蹴りがフィサリスのみぞおちに入る。一瞬フィサリスの気が少し弱くなる。
マティーが続けて蹴りをして、フィサリスの左足の義足の膝のあたりの可動部を攻撃する。
フィサリスは避けようとするものの、その甲斐なく可動部にあたってしまう。可動部の筋肉がいくつか内部でちぎれ、そこから蒸気がいくらか漏れ出していく。
そしてマティーが、フィサリスの頭に右手で打撃を加えようと左に一回転して勢いづけてから、裏拳で打撃する。
だが、フィサリスはそれを、頭をのけ反らせて避けると手刀で、マティーの右腕の義手を肘から先をへし折った。ちぎれたケーブルから蒸気がプシューとあふれ出していく。
「やるじゃな~い。腕やっぱにぶっちゃったかな?」マティーが笑いながら答える。
「だから言ったでしょ。大丈夫だって!」フィサリスがそう返答すると、マティーに左上段回し蹴りをする。
マティーも右上段回し蹴りでそれにこたえる。その衝撃でフィサリスとマティーの足の蒸気義肢の筋肉がちぎれ飛び、お互いの足の蒸気義肢のフレームが支柱以外の支えとなる部分が三つ折れてしまった。
その痛みに耐えながらフィサリスが拳で正拳突きをするものの、マティーも正拳突きをする。お互いの拳同士が重なり、衝撃で二人とも吹っ飛び、薄い木の板でできた道場の壁を突き抜けた。
普通なら受け身をとった後、素早く相手に接近して攻撃を試みるものの、足の義肢にダメージが入っているため、二人とも受け身をとるのに手間取ってしまった。
(やっぱ片手じゃあ、硬直状態か…だけど…!)フィサリスがマティーにかけ詰める。
マティーは息を吐いて、拳を固めて満身の力を込めて正拳突きをする。
フィサリスも打撃でそれにこたえようとしようとしたものの、左足の蒸気義肢の内部のフレームがぐにゃっと曲がり、体が前かがみになってそれを結果的に避けてしまう形になる。
(え…嘘!このままだと先に倒れて負けちゃうからさっきのあれで!)
そしてフィサリスは相手を掴むように左手を広げた。
マティーは左手でとっさにガードするものの、フィサリスの狙いは違い、マティーの胸を道着の上から優しくつかんだ。
そしてそのままフィサリスがマティーを押し倒す形となった。
「え……フィサリスちゃん……?」マティーがあっけにとられる。「もらった!」勝ち誇るフィサリス。
「また私の勝ちですね。でも今日は危なかったです」フィサリスがそう明るい表情で答える。
「ふ~ん、フィサリスちゃん、それ反則じゃない~?」そういいながらマティーもフィサリスの胸を道着の上から左手でつかむ。
「新しい技、習得したり~!」マティーがフィサリスの胸を揉みながら明るく笑る。
「やめてくださ~い!」フィサリスも笑いながらそう言った。
その光景を、八墨とその四人の弟子のうちの三人も呆気にとられながらそれを眺めていた。

午後4時、道場を八墨とその四人の弟子が壁を直しているさなか、外ではミスミの怒声が響いていた。
「先輩たち~!義肢治すのも時間かかりますから大事にしてください~!」ミスミがマティーをお姫様抱っこしながら答える。
姿は4~5時間前の、装甲がなく、蒸気筋肉をさらしたままの蒸気鎧の姿のままだ。
「「いやいや、ごめんね~」」フィサリスとマティーが同時に答える。
「この人たちのことだよ。絶対守らないよ」フィサリスをお姫様抱っこしながらヴィーが答える。
その顔はあきれながらも、微笑んでいた。
ヴィーのほうは特に任務も用事もなかったので食べ歩きにも飽きてフィサリスの用事を見に道場へ、
ミスミは、明るくマティーを送り出したものの、こちらもマティーの無茶ぶりを心配して来たのだ。
これから二人とも警察署の宿舎にフィサリスとマティーを送るところだ。
「そうだ!話は変わりますけどヴィーさんも私の新型試してみません!?簡単に言えば空飛ぶやつで理論は……」
「いやいや、またでいいよ」ヴィーが素っ気なく答えた。だがミスミの言う新型を趣味のバイクに組み込んみたら面白そうだとも思った。




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